店舗や企業アプリの運用を始め、ユーザーと継続的な接点を作りたいと思ったとき、「KPI」という指標が重要になってきます。
KPIを設定することによりアプリでの問題点を見つけたり、サービスの向上を図ることができます。アプリ運用する上でのKPIとは何なのか、設定方法や分析までを解説します。
- アプリでKPIが重要な理由
- アプリ運用での専門用語
- アプリのKPIを設定する目的
- アプリを効果的に運用するためのKPIの設定の仕方
- アプリのKPIツリーの必要性
- KPIを分析する方法
- アプリ改善のためのKPIの検証の仕方
アプリ事業でKPIが重要な理由

企業アプリや店舗アプリを作ったからといって、それで満足してしまってはいけません。KPIはKGIといった目標を達成するためにプロセスの実施状況を把握するための指標です。
例えば、店舗アプリでの販促を目的として売り上げ額を設定したとき、それを達成するために状況をチェックし見通しを立てたりできます。
また、ユーザーがどのくらいアプリを利用しているか調べたり、クーポンを配布したときの利用率を把握することもできます。
KPIを設定することにより、アプリの問題点を整理し、適切に運用されているかどうか判断することができるようになることが重要です。
KPIやKGIとは?~今さら聞けない語句の意味~

アプリのマーケティングを学んでいくとKPIやKGIなどアルファベットの略字が数多く登場して、わかりづらい場合がよくあります。ここでは今さら聞けない用語の意味をわかりやすく解説します。
KPIとは?
KPIとは「Key Performance Indicator」の略で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。ビジネスの目標は「KGI」を達成することです。その途中にある業績項目を評価するために設定するのが「KPI」です。
つまりゴールの途中にあるチェックポイントのようなものです。例えば、集客目的の店舗アプリであれば、「アプリ会員数」や「アプリの利用度」「プッシュ通知の開封数」などが挙げられます。
KPIを設定することにより、ゴールへの目標が細分化され、わかりやすく整理できます。その結果、チームワークが高まり、目的意識の共有化ができるようになるでしょう。
KPIと混合されやすいKGIとは?
KGIとは「Key Goal Indicator」の略で、日本語では「重要目標達成指標」と訳されます。つまり、ビジネスの最終目標を数字で判断、評価できる指標です。例として「売上高」や「成約数」「利益率」などが挙げられます。
KPIが目標に至るためのステップであるのに対し、KGIは目標そのものといったところでしょう。KPIの指標をそれぞれ分析し、こつこつ改善することによって達成できる「ゴール」がKGIと言えます。
語感が似ているので混同されやすいですが、意味は「手段」と「目的」で異なるので間違えないように気をつけましょう。
アプリのKPIを設定するうえで知っておくべき語句

アプリのKPIを設定する上で知っておくべき語句がいくつかあります。アプリの運営計画を立てるときに根幹となる指標を知っておけばスムーズに立案できるので覚えておきましょう。
KSF(重要成功要因)
「Key Success Factor」の略。KSFはアプリ開発の戦略的目的を実現するために、どのような要因が必要であるかを定めたものです。
KPIが目標に対するベンチマークであるのに対し、KSFは目標を達成するためにすべきことを意味します。
AU(アクティブユーザー)
「Active User」の略。一定期間内にアプリやサービスを利用したユーザーの数のことです。その集計期間によって下記の種類に分けられます。
アクティブユーザーは「人数」をカウントするもので、「利用回数」を数えることではないことに注意しましょう。
DAU(日別アクティブユーザー)
「Daily Active User」の略。1日に1回以上、サービスを利用したユーザーのこと。毎日、サービスを利用してもらうことを目標としている場合の指標です。音楽配信アプリや健康管理アプリなどで使われます。
WAU(週間アクティブユーザー)
「Weekly Active User」の略。1週間に1回以上、サービスを利用したユーザーのこと。毎日ではないが、習慣的にサービスを利用してもらうことを目標にしている場合の指標です。
例えば、映像配信アプリなど、生活の一部としてサービスを使ってもらっているかを判断します。
MAU(月別アクティブユーザー)
「Monthly Active User」の略。1ヶ月に1回以上サービスを利用したユーザーのこと。ゲームアプリや店舗アプリなどで、よく用いられます。時間をかけて長期間にわたってサービスを利用してもらう場合の指標に用いられます。
ARPU(1ユーザーあたりの単価)
「Average Revenue Per User」の略。指定期間におけるアプリユーザー1人あたりの平均売上額を意味します。ARPUは以下の計算式で求められます。
ARPU=「売り上げ」÷「ユーザー数」
主に通信事業のような月額課金モデルの業種でつかわれてきた指標です。しかし、最近はスマホゲームなどのアプリ事業でも企業の業績を評価する指標としても普及しています。
DL数(ダウンロード数)
開発したアプリはApp StoreやGoogle Playなどのストアで公開され配信されます。ユーザーはこれらのストアからダウンロード、インストールすることでアプリを利用します。
「DL数」とはアプリストアからスマホなどのデバイスに、アプリがダウンロードされた回数です。
アプリのKPIを設定する目的

なぜKPIを設定することがアプリを運営していく上で大事なのでしょうか。KPIを設定する目的を一言でいうと「KGIを達成するために重点的に取り組む課題を明確にすること」だと言えます。
現状の把握
KPIは客観的な数値で現状を把握できるので、現在行っているアプリ運用への対策の良い部分と悪い部分を判断できます。
例えば、あるKPIの数値が目標とした指標より上回っているならば、予定どおりにKGIを達成できるでしょう。背策は正しいと言えるので継続、強化していくことを決定できます。
逆に、KPIの数値を下回っている場合はKGIの達成のために立てた戦略にズレがある可能性があります。すみやかに改善の方法を探る必要があるでしょう。
取るべき行動の明確化
KPIを設定することによって、KGIを達成するために必要な施策が具体化しやすくなります。KPIは単価や会員数、売り上げなど具体的な数値でなくてはなりません。
目標を数値により可視化し計測することで、社員や従業員の作業効率を高める意味があります。ビジネスを成功に導くために必要なことは何なのか?数値目標を立て、どうしたらそれを達成できるか考えていくことが大切です。
例えば、KPIに「アプリの会員数」を設定した場合、どうしたらその数値を増やすことができるのかを検証し、売り上げを増やすための道筋を考えていくことが必要になります。
アプリを効果的に運用するためのKPIの設定の仕方

自社のアプリを作り、運用しただけで自己満足に終わってはいけません。アプリを効果的に運用するために、すべきことがあります。アプリを使って何をしたいのかをKPIなどの数値を設定することで道筋を立てて整理していきましょう。
アプリのKPIを設定する前にKGIを決める!
多くの企業はKPIを達成することが目標となってしまい、最終目標であるKGIにつながるものかどうか議論できてないのではないでしょうか。
アプリを開発・運用するのは手段であり、あくまでも事業の目標達成のために行われなければなりません。まずは経営・事業戦略をふまえたうえでのKGIを設定することが大切です。
例えばKGIを「アプリ運用で月間セールス30%アップ」と設定した場合。KPIは「アプリのダウンロード数を10%増やす」や「購入画面からの離脱率を5%減らす」などとなります。
KGIからKSFを選定する
KGI(最終目標)が決まったら、それを達成するためのKPIを策定する前にKGIを分析します。そして、どのような条件が必要か、重要とすべき成功要因は何か考えKSFとして選定します。
KSFに基づいたKPIを設定すると、KGIという最終目標からずれないKPIが設定できます。KSFはKGIと比べ、経済や時代の変遷によって大きく影響を受けます。
1度策定したらそのままにせず、常に時代の流れや周囲の状況の変化によって、柔軟に変えるべき指標だと考えましょう。
<KGIとKSF及びKPIの具体例>
KGI | 期間 | 1年 |
目標 | 売上20%向上 |
【分析内容】
アプリのダウンロード率は同種他社アプリに比べ2倍高いが、売上が伸びていない
→理由を分析
- アクティブユーザー数が競合アプリに比べて約半数と少ない
- 平均単価が競合アプリに比べて20%少ない
【KSF】
- 1年間でアクティブユーザー数を2.5倍増加
- 課金ユーザーが競合アプリに比べて20%少ない
- 継続率を1年間で30%向上させる
- 課金ユーザー率を1年間で20%向上させる
アプリのKPIの細分化
アプリのKSFを設定したら、次はその目標を達成するため評価指標を洗い出していきましょう。具体的な数値を出せるもので、達成できているかどうか客観的に判断できるものを細分化して設定する必要があります。
細分化とはKSF の構成要素を分解して目標を設定することです。例えば、売上はユーザー数、単価、購入頻度などに分解できます。
そして、ユーザーはさらに細分化できます。ユーザーは新規ユーザーと既存顧客、さらに購入頻度は時間帯や曜日などに分けられるでしょう。
KPIを細分化することによって数値を個別に分析し、それぞれに目標を立てることによってKGIやKSFの達成が視覚化できるようになるでしょう。
アプリのKPIツリーの作成

KPIツリーとは、アプリのKGI達成を目標としたとき、KSFとともに構成する要素を細分化して施策を実行可能になるまで視覚化して落とし込んだ指標の一覧です。
KPIツリーがあると、KGI、KSFを達成するための途中経過指標として、どのような行動をとればいいのか明確になります。アプリの売り上げを上げる指標はいくつもあり、それをKPIに決めることばかり考えてしまいます。
しかし、KPIがKGIを達成する要素になってない場合、努力の方向が的外れになってしまいます。そうすると、いくら頑張ってもアプリの売り上げにはつながりません。
KGIから順番にKSF、KPIを定めることで、効果的なKPIツリーを策定することができます。
アプリのKPIツリーの必要性

それではアプリのKPIツリーの必要性について、具体例を挙げてみていきましょう。
アプリのKPIツリー作成メリット
アプリのサービス収益は、様々な要素が絡み合って成り立っています。改善するとしても、どこをどのように変えていけばいいのか悩んでしまうこともあるでしょう。
KPIツリーを作ることで、収益につながるまでの指標のうちで、どの地点が悪いときに、どういった要素があり、どうやったら改善できるのか整理がしやすくなります。
数値目標が設定されることで情報が整理され、チームでの指標改善への取り組みが共有され、連携がとりやすくなります。
また、KPIの目標に届かなかった場合、どの項目への取り組みが弱かったのかなどの検証も効率的におこなうことができます。
例えば、KPIに「クーポン閲覧数」と「クーポン使用率」があった場合、閲覧数の数値が高いのに使用率が低かったとします。理由を考えると「クーポンの内容の魅力が低かった」などの原因が考えられるようになります。
具体例に学ぶKPIツリー
KPIツリーは目的や業種、それに至る施策によってそれぞれ異なります。ここでは実際に各業種のKPIツリーを実例から見ていきましょう。
店舗系アプリ

飲食店のアプリをKPIツリーに落とし込んだ例です。月次アプリ売上をKGIにしたとき、アプリを使ったクーポン配布の効果を検証できる構造になっています。またリピート率などユーザーの動向も把握することで対策がとれるでしょう。
EC系アプリ

ショッピングアプリをKPIツリーに落とし込んだ例です。ユーザーとの接点の強化や利用状況の可視化、買い物体験の向上等の数値を把握できます。プッシュ通知を活用しセールイベントを行うなどのツリーを追加することもできます。
KPIを分析する方法

アプリのKPIは企業にとって有益ですが、使い方によってはその効果を得られない場合があります。
それはKPIの数値を分析しないで無駄にしてしまうときです。KPIはきちんと計測し、それを分析することによって、はじめて効果を得られるものです。ここではKPIの計測の方法を紹介します。
Google アナリティクスで計測
Googleでは、ホームページやアプリの開発者向けに、アクセス解析ツールを無料で提供しています。これらを活用すればKPIを計測することができます。
「Firebase Analytics」はアプリの使用状況を効果的に分析できるほか、ユーザーにメッセージを送信する機能も搭載されています。また、「Googleアナリティクス」も有用ですので活用するとよいでしょう。
もとはWebサイト用として開発されたものですが、レポートをカスタマイズできる優れた機能が備わっています。
これらのツールを使えば、アクティブユーザー数を把握したり、新規流入数などの情報もチェックできます。また、インターフェースも洗練されていて見やすいので、複数のKPIを参考にする場合もうってつけです。
アプリで計測
集客アプリでは、顧客の行動データをデータ化し、分析を行う機能を持つものがあります。また、アプリを設計する段階で、収集するデータを設定しておくことも、運用の際に重要になってくるので気をつけましょう。
来店時のスタンプ機能やプッシュ通知でのセール告知など、いろいろな販売促進でアプローチしながら顧客のデータを集め、分析を行うことができます。
来店数で計測
KPIはインターネットやアプリ経由でなくとも、実店舗で計測することもできます。例えば、店頭アンケートを実施することで、アプリで送ったイベント情報などを理由に来店したかを判定できます。
また、クーポンをアプリで配布した場合、利用された回数や金額などを、POSレジで会計時に計測することもできます。
アプリの改善はKPIの検証にあり

アプリのKPIを十分に活用するには、設定した指標となるデータを集めて満足するだけではいけません。その後にしっかりと分析し、検証して指標の改善につなげることが大切です。ここで役にたつのが「PDCAサイクル」です。
PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を繰り返すことによって、事業を継続的に改善していく手法です。
このサイクルを反復することで、施策をより良いものにすることが、アプリ事業を継続的に成長させることにつながります。まずは明確な目標(KGI)を立て、KPIで数的に実施状況をチェックすることが必要です。
KPIが達成できていない場合は、そこから課題をみつけ、改善が可能かどうか検証しましょう。そして、できる限りすみやかに次のフェーズに向かう仕組み作りを心がけてください。

KGI達成のために
開発したアプリが求めている目標(KGI)を達成できるかどうかは、その後の成長と改善にかかっています。
アプリのダウンロード数だけ見ていたり、漠然とした盛り上がりの雰囲気だけで判断していると、対策が後手になってしまいます。まずKGIを定め、KSFを選定したあとKPIツリーを作ります。
そして、アプリを運用することで出てくる結果をKPIで分析したあと、具体的な行動で改善のサイクルを回すことが、最終的な目標の達成につながるでしょう。
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