スマートフォンが1人1台のデジタルデバイスになりつつある今、アプリの市場も急激に拡大しています。
多くの企業がアプリマーケティングを取り入れており、「うちも始めてみようかな」と検討している方も多いのではないでしょうか?
アプリマーケティングとは、アプリを導入し顧客とコミュニケーションを行うものです。アプリを導入するだけでなく、定期的に施策を打って活用していくことが重要です。
今回は、アプリマーケティングの基礎知識から売上アップにつながる施策まで詳しく紹介し、どのようにアプリマーケティングを行っていくべきか解説します。
- アプリマーケティングについての基礎知識
- アプリマーケティングの成功例
- アプリマーケティング開始時の注意点
- アプリマーケティングを売上につなげる施策
アプリマーケティングとは?

アプリマーケティングとは何か、絶対に知っておきたい基本的な情報をお伝えします。
デジタルマーケティングの種類
デジタルマーケティングとは、インターネットやデジタルデバイスを用いたマーケティング手法の総称で、ネットの普及にともないさまざまなマーケティングが行われています。次の6つは、主なデジタルマーケティング手法です。

Web広告+自社Webサイト
ネット上に広告を掲載し、自社のWebサイトに集客するための手法。
Web広告には、リスティング広告、ディスプレイ広告など、掲載する場所や内容によってさまざまな種類がある。主に新規顧客獲得のために使われる。
他社メディアサイト+自社Webサイト
他社のメディアサイト(ポータルサイトなど)に自社の情報を掲載し、自社サイトに集客する手法。同業他社の商品やサービスが一度に比較できるポータルサイトを経由することで、購買意欲の高い新規顧客を獲得しやすくなる。
SEO対策+自社Webサイト
自社のコンテンツを検索エンジンで上位表示されるよう改良することで、自社Webサイトに集客する手法。自社サイトに対策を施すので、広告費をかけずに集客できる。主に新規顧客獲得のために使われる。
SNS
TwitterやInstagramなどのソーシャルメディアを用いた方法。自らの情報発信だけでなく、ユーザーによる情報拡散を狙える点が他の手法にはないメリット。
新規顧客獲得のためだけでなく、リピーター獲得の手段としても有効。
メルマガ
見込み顧客や既存顧客に対してメールを通じて情報を配信し、集客する手法。最近ではメールの代わりに、LINEのトーク機能を用いる企業も増えている。リピーター獲得のために使われる。
アプリ
プッシュ通知や位置情報サービスなどアプリならではの機能の他、独自のショップ情報やスタンプ機能を用いて集客する手法。
Webサイトへアクセスすることなく、顧客へダイレクトに情報提供できる点がアプリのメリット。リピーター獲得のために使われる。
このようにアプリマーケティングは、あくまで複数あるデジタルマーケティングの1つです。アプリマーケティングの手法を活かすには、まずアプリマーケティングの特徴や注目されている背景を理解しておく必要があります。
アプリマーケティングはなぜ必要?

新規顧客獲得がいかに大変でコストがかかることか、経営に携わったことのある方なら実感されているのではないでしょうか。
消費市場が成熟し、顧客ニーズが多様化する状況では、新規顧客をつかまえることも大事ですが、一度購入いただいたお客様に気に入られ、何度も足を運んでもらえることの方が重要です。
そんな中で、顧客を維持する手段としてアプリマーケティングが重要視されているのは、アプリの普及が爆発的に進んでいることにあります。
米App Annie社の「モバイル市場年鑑2020」によれば、2019年の全世界のアプリダウンロード数は2040億件、アプリストア内での消費支出は1200億ドルにのぼります。
ダウンロード数は2016年から45%増、支出は2.1倍に増加しました。世界的にアプリ市場が拡大していることが分かります。
日本においても、総務省の令和元年(2019年)通信利用動向調査で、スマートフォンの世帯保有率が83.4%と初めて8割を越えたことが分かりました。個人保有率は67.6%で、世帯保有率、個人保有率ともに年々増加しています。
また、ニールセンデジタル株式会社の調査で、スマートフォン利用時間の92%がアプリの利用であることが分かりました。利用時間も3時間46分と長く、1日の4時間近くをスマートフォンに費やしています。
スマートフォンの普及に伴い、アプリも私たち一人ひとりの日常に欠かせないものになりました。顧客との接点を途絶えさせないために、アプリマーケティングは極めて重要な手段といえます。
アプリマーケティングの方法
アプリマーケティングの方法は、顧客に自社アプリをインストールしてもらい、顧客とコミュニケーションをとるものです。Webサイトなどを経由することなく、ダイレクトに顧客とコミュニケーションできる点が大きなメリットです。
ただ、ダイレクトに顧客とコミュニケーションがとれるという点では、Eメールマーケティングも同じです。
では、アプリとEメールの違いは何でしょうか?それはアプリを通して得られるUX(ユーザーエクスペリエンス;ユーザー体験)の質です。
メールは文章でしか情報を伝えることができず、使用できるレイアウトやデザインにも大きな制限があります。
しかし、アプリならテキストはもちろん、写真やアプリの機能、デザインを通して商品情報やブランドイメージなど自社の個性を伝えることができます。
このようにアプリならではコミュニケーションを通して、顧客の来店促進やロイヤルティを向上させることができます。
アプリマーケティングの効果

アプリマーケティングを行うと、次のような効果を得られます。
- 顧客属性、顧客の購買行動の把握
- セールやキャンペーンなどの情報配信による顧客の囲い込み
- クーポン配信で来店促進
- 顧客属性に合わせた情報配信
- 開封率の高いプッシュ通知機能の利用
このようなアプリのメリットを活かすことで、集客やリピーター獲得、売上アップにつなげることができます。
アプリマーケティングの成功事例

ここではアプリを活用したマーケティングの成功事例を2つ紹介します。
マクドナルド
日本マクドナルド株式会社のアプリ「マクドナルド」は、フラー株式会社が発表した2019年のApp of the year(アプリ オブ・ザ・イヤー 最優秀賞)を受賞しました。
期間中何度も利用できるクーポンの配信や最寄り店舗の検索などの機能を実装し、利用者数を大きく伸ばしたことが受賞につながりました。
また、2020年からアプリでの事前注文とキャッシュレス決済ができる「モバイルオーダー」機能を追加し、さらに利便性を高めています。
ユニクロ

ユニクロでも、自社アプリを活用した店舗集客の取り組みを行っています。
アプリインストール時に店舗で利用できる割引クーポンでダウンロードを促し、セール情報をプッシュ通知で知らせることで来店を促進しています。
また、店舗の在庫情報を確認できる機能がついており、来店前に最寄り店舗の在庫を知ることができます。
「来店したがほしい商品が欠品していた」という顧客の不満を未然に防ぎ、顧客の購買意欲や購入後の満足感を高めることに貢献しています。
成功のポイントはO2O
マクドナルドとユニクロの成功事例から、アプリマーケティングにはO2O(Online to Offline)施策をどのように取り入れるかが重要となっています。
O2Oはオンラインからオフラインへ顧客を誘導し、購買につなげるサービスのことです。
両者ともクーポンを中心とした来店誘導の仕組みや「モバイルオーダー」や店舗の在庫検索機能など、オンラインと実店舗をつなぐ機能を取り入れ、来店に結びつけている点が成功のポイントといえます。
アプリマーケティング成功のためのプロモーション

アプリマーケティング成功のために、アプリのプロモーションが不可欠です。
どんなに良いアプリを開発しても顧客に存在を認知してもらえなければ、その機能を十分に活かすことができません。
ユーザー数を増やすためにも、まずは次の3つの方法を試してみてください。
Webサイト
Webサイトはプロモーションの側面だけでなく、アプリの信頼性を高めるためにも必要です。
アプリをインストールする前に「安全なアプリなのか」「開発元は信頼できるのか」と気になるユーザーは少なくありません。
自社サイトにアプリ専用ページをつくる、トップページにアプリの紹介文を掲載するなど、安全なアプリだと伝える工夫をしましょう。
SNS

既存ユーザーの多い、TwitterやFacebookなどのSNSも、プロモーションに重要なツールです。既存のSNSにアプリの宣伝を投稿する、アプリの公式アカウントを作成するなどして積極的に活用しましょう。
アプリの利用方法やアップデートの情報など、定期的に情報発信することが大切です。さらに、実際のユーザーから直接アプリの意見や感想をもらえるという、SNSならではのメリットも得られます。
また、有料にはなりますが、SNS上で広告を出すことも有効なプロモーションです。他の広告より比較的安く、SNSの登録情報からセグメントを絞って効率的に広告を出すことができます。
実店舗
オンラインのプロモーションだけでなく、店舗や街頭などオフラインのプロモーションも重要です。
店頭にポスターを貼る、レジ横にPOPを設置する、会計時に店員から紹介するなど、来店した顧客にPRすることでリピーターにつながるきっかけをつくることができます。
インストールして会員登録するとすぐに使えるクーポンをつけるなど、特典があるとより効果的です。
アプリマーケティングの評価指標

アプリは導入して終わりではなく、マーケティングが正しくできているかを定期的に計測する必要があります。ここでは、そのための指標を2つ紹介します。
アプリのインストール数
アプリのインストール数は、アプリの認知拡大を測るための指標です。アプリ導入後、まずはインストール数を基準にして、顧客がアプリをインストールするまでのマーケティング戦略を練りましょう。
ただ、インストール数はあくまで最初のステップに過ぎません。目的はアプリのアクティブユーザーを増やし、集客・売上につなげることです。
店舗からなのか、SNSからなのか、インストールまでの導線も分析し、よりアクティブユーザーにつながりやすいプロモーション方法を探りましょう。
アクティブユーザー数

アクティブユーザーとは、ある一定期間内にアプリを利用した人のことです。
アプリをインストールしただけ、1度利用しただけで終わってしまうことはよくあるため、アプリがどの程度活用されているか分かるこの数値は、アプリマーケティングにおいて最も重要な指標です。
1日、1週間、1カ月ごとのアクティブユーザー数や利用のタイミング・利用期間などを細かく分析し、多くのユーザーに継続的に利用してもらうための施策を探りましょう。
アプリマーケティング開始時のポイント

ここでは、アプリマーケティングを開始する際のポイントを紹介していきます。
競合アプリを調査する
アプリマーケティングに取りかかる前に、まずは競合他社のアプリがどんなものか調査しましょう。
競合アプリの調査ポイントはこちら、
- インストール数
- 特徴
- 機能
- デザイン
- アプリストアの紹介文
- アプリストアのレビュー
- アプリ用のSNSアカウントの有無
上記のポイントを分析することで、競合のターゲットやユーザーがアプリに求めている機能、ユーザーのアプリに対する反応がわかります。
競合のアプリを複数調べ、自社アプリにも取り入れるべき特長や差別化のポイントを探しましょう。
アイコンにもこだわる
アイコンは、アプリの顔という重要な役割を果たしています。
ホーム画面に常時表示され、顧客がコンタクトする最初の場所です。アプリの機能面はもちろん、アイコンが顧客にどういったイメージを与えるかも考えなければいけません。
フラー社の「モバイルマーケット白書2019」によると、1人当たりの平均所持アプリ数は99.3個(2019年12月の値)でした。
100個近いアプリの中から選んでもらうためにも、シンプルで何のためのアプリか分かりやすいアイコンにすることが大切です。

アプリ導入後の体制を整えておく

アプリマーケティングはアプリを導入して終わりではありません。導入後、定期的な更新や通知ができなければ、せっかくのアプリを十分に活かすことができません。もちろん情報配信だけでなく、その後の数値分析も必要になります。
また、あまり更新がないアプリは顧客に不満を抱かせてしまい、アプリを導入したことがマイナスイメージにつながってしまう可能性があります。
安易にアプリマーケティングを始めるのではなく、事前にその後の運用がきちんとできる体制を整えておくことが大切です。そして、ユーザーだけでなく運用側にとっても使いやすいシステム導入も重要なポイントになります。
アプリマーケティングで売上を上げる施策

ここでは、アプリならではの機能や、アプリを通して得られる情報を活かし、売上アップにつなげる施策を紹介します。
プッシュ通知
アプリの機能で最も有効なものに「プッシュ通知」があります。プッシュ通知はスマートフォンのロック画面に、アプリからのお知らせを表示させる機能です。
ロック画面からアプリへ直接誘導できるため、ユーザーのアクションを引き起こしやすくなります。
また、アプリを起動していない状態でもバナー表示されるため、自然にユーザーへ最新情報を伝えることができます。
ただし、配信するタイミングや配信頻度には十分考慮して、ユーザーに不快感を与えないようにしましょう。
セグメント配信

セグメント配信とは、性別や年齢、来店頻度などの顧客情報によって、提供する情報を分けて配信する機能です。
性別や年代などの大きなカテゴリーに合わせた内容だけでなく、購買履歴にある商品と類似した商品の入荷など、よりパーソナライズされた情報を配信することもできます。
顧客個人個人に寄り添った便利な情報を提供することで、購買行動につなげやすくなるだけでなく顧客のロイヤルティ向上にも役立ちます。
クーポン配信
クーポン配信は顧客の目に留まりやすく、集客につながりやすい施策です。新規顧客の獲得、既存顧客のリピート促進、クーポンのお得感による購入単価アップなどのメリットがあります。
割引クーポンが一般的ですが、ノベルティプレゼントや来店頻度に合わせたクーポン配信など、割引目的の顧客ばかりにならないような工夫をしましょう。
ポイントカードのカードレス化

キャッシュレス決済や「Apple Pay」「Pay Pay」などのスマートフォン決済が浸透してきたことで、ポイントカードや会員証もカードレス化が進んでいます。
カードタイプの場合、忘れてしまうことがありますが、アプリであれば予定外の来店時であっても問題ありません。
また、ユーザーの利便性向上だけでなく、店舗にとっても顧客情報のデータ管理がしやすくなるというメリットがあります。
顧客分析
どのようにアプリが利用されているかを分析することで、顧客が何を求めているかさまざまな面から知ることができます。
例えば、このような情報を知ることができます。
- どの機能がどれだけ利用されたか
- どのページの滞在時間や閲覧数、離脱率が高いか
- プッシュ通知の開封率はどれくらいか
- クーポンの利用率はどれくらいか
- 情報配信後どの程度来店があったか
データを集めることで現在の施策がうまく機能しているかの判断基準ができ、問題点を改善するための具体策も立てやすくなります。
アプリマーケティングは囲い込み戦略にも有効

「パレートの法則」はイギリスの経済学者ヴィルフレド・パレートが提唱した、顧客の上位20%が全体の利益の80%を生み出しているという経験則です。
その法則からも分かるように、既存顧客の他商品やサービスへの流入を防ぐ囲い込み戦略は、経営を安定させるために欠かせません。
顧客を囲い込むには、長期にわたって顧客と関係性を築くことができるかがカギとなります。
アプリが人々のライフスタイルに溶け込んでいる今、アプリでの定期的なコミュニケーションはEメールやDM、Webサイトよりも顧客に届きやすく、顧客のファン化につながりやすくなります。
アプリマーケティングを上手に活用し、優良顧客を増やしていきましょう。
アプリは顧客との継続的なコミュニケーションツール
スマートフォンの爆発的な普及にともない、顧客と継続的にコミュニケーションをとる方法として、アプリマーケティングの重要性はますます高まっています。
米App Annie社の「モバイル市場年鑑2020」で、「⼩売の総収益額(オンラインと店舗の合計)とショッピングアプリの利⽤時間には、強い相関関係が存在する」ことが分かりました。
また「これは、買い物にモバイルを利⽤する消費者が増えているというだけでなく、⼩売業者の側もモバイル体験を拡充し、閲覧から決済、受け取り⼿配、購⼊品の追跡に⾄るまで、購⼊ジャーニーのあらゆる局⾯の改善に取り組んでいることを⽰すものである」と分析しています。
アプリを導入するだけでなく、アプリマーケティングの結果を分析・改善しながら、顧客と良好な関係を築いていきましょう。